社会起業家に学ぶ「応援される会社のメカニズム」(前編)

  ※ベンチマーキングとは、
   「他社の優れている点を学び、自社に活用する」という経営手法です。

   本コラムでは、高い業績をあげている企業の「ベストプラクティス」を探り、
   御社の企業経営・マネジメントに活用できる内容をお届けします。


 ●社会起業家に学ぶ「応援される会社のメカニズム」(前編)

  今回のコラムでは、注目度が年々高まっている
  「社会起業家」について取り上げます。

  ※社会起業家とは、社会の課題を、ビジネスの手法により
   解決しようとする事業家のことを指します。

  企業のCSR活動など、社会貢献活動の重要性が高まっており
  特に東日本大震災後、その傾向はますます強まっています。

  そこで今回のコラムでは、社会起業家の取り組みをご紹介しながら
  “お客様や社会から応援される会社のメカニズム”について
  前編・後編と2回に分けてお伝えしたいと思います。


  前編では、

   「社会起業家とは何なのか?」

   「なぜ社会起業家をベンチマーキングしないと生き残れないのか?」

   という時代背景をご説明します。

  後編では、

   「自社の経営に社会性、社会貢献の要素をどのように取り入れるか」

   「結果的にどのように見込み客を加速度的に獲得するのか」

   という点を、企業事例を交えてお伝えしていきます。

  社会起業家を単なるキレイ事としてお伝えするのではなく
  新しいマーケティングの視点としてお伝えしていきます。

  また、高度成長社会から低成長社会、そして本質的な意味で
  成熟化する社会に移行する、大きな時代のうねりの中で
  企業がどのように環境適応したり、進化していく必要があるのか
  という点を踏まえてお読み頂ければ幸いです。


社会起業家とは?

  発展途上国貧困層の問題や、環境破壊問題など
  かつてはボランティアやNGONPOが取り組んでいた
  社会問題のテーマに対して
  近年、ビジネスとして利益を上げながら問題を解決
  していく起業家、事業家が増えております。

  その人たちを「社会起業家」と呼びます。

  一例を挙げると
  ホームレスの自立を促すために支援するビジネスがあります。

  ホームレスの人の救済(チャリティ)ではなく、
  仕事を提供し自立を応援するビジネスとして設計されています。

  それがホームレスの人が販売する
  「ビック・イシュー」という雑誌ですが
  ご存じでいらっしゃいますでしょうか。

  都市部だとホームレスが「ビックイシュー」を手に掲げ
  1誌300円で販売しております。
  (そのうち160円がホームレスの収入になります)

  【ビックイシュー詳細】
   http://www.bigissue.jp/index.html


  また、身近なところだと「病児保育」という社会問題を
  ビジネステーマとした「フローレンス」という社会企業もあります。

  働くママにとって、子供の急病は仕事の調整が必要となり、
  会社やお客様に迷惑や負担を掛けるため、大きな悩み事の一つです。

  実際に子供の病気で仕事を休むということが頻発し、
  辞めざるを得ない状況に陥るケースや解雇となる例も沢山あります。
  (もちろん企業にとっては止むを得ないことだと思います)

  そんな「病児保育」の問題を解決するために、フローレンスでは
  病児保育の課金モデルを従来の「従量制課金」ではなく、
  低価格の「会費制」を採用することで継続的なビジネスとして成立させました。

  【フローレンス代表の著書】
   『「社会を変える」を仕事にする 社会起業家という生き方』
    http://amzn.to/tO6ekk


  特筆すべきことは、これらのビジネスを、
  大手企業の幹部出身者やコンサルティング会社の
  戦略コンサルタントなど、ビジネスの第一線で
  活躍している人たちが実践し、収益を上げていることです。

  ※ちなみに、2010年に全米文系学生・就職先人気ランキングで
   1位となったのは、グーグルやアップルをおさえて
   「ティーチ・フォー・アメリカ(Teach For America、TFA)」という
   社会起業家が作った団体であり、
   すでに大きなムーブメントになっています。


  とはいえ、
  「社会貢献がビジネスになるのか?」
  「事業で儲けて税金を納めることが社会貢献だ」
  「ボランティアは会社を大きくしてから老後にするべきだ」
  などの感想をお持ちの方も多いでしょうし
  実際にそのような批判を受けることもあるそうです。

  ただ、社会貢献に対する消費者の関心は
  東日本大震災を通じて高まっていることも
  ご理解いただけると思います。

  また、数値データを見ていくと
  社会問題を解決する「社会的企業」「ソーシャルビジネス」と
  呼ばれる事業の市場規模は、
  日本で「2400億円」(2008年、経済産業省調べ)と推定されます。

  この「2400億円」は住宅業界と比べると小さな市場に見えますが
  他の市場・業界と比較すると
   ・アニメの市場規模「2290億円」(2010年)
   ・ゴルフ場業界の業界規模「2465億円」(2010年)、
   ・2015年の電子書籍コンテンツの市場規模の予測「2400億円」(野村総合研究所
調べ)
  であることから
  アニメや電子書籍と同じインパクトを持った市場規模と
  見ることもできます。

  ※ちなみに、社会起業家の発祥の地であるイギリスは
   市場規模「3.6兆円」と日本の10倍以上にのぼる。


●なぜ社会貢献の重要度が高まっているのか?

  重要度が高まっている背景として、
  大きく2つの変化があります。

  1つは、消費者の「幸せ観」の変化。

  「自分だけが満たされても幸せになれない」
  「大切な人とのつながり・絆を大切にしたい」
  「社会や世界がより良くなることが重要だと思う」
  という幸せ観が消費者の間で、特に若い世代を中心に
  広まってきていることです。

  その理由は
  自社の時価総額を高めることに邁進したIT企業の社長が失脚した事件や
  金融システムによる錬金術の金融バブルがはじけたリーマンショックなどを
  目の当たりにしてきたことも一因です。

  「お金儲けだけが、人生の成功ではない」
  「私利私欲を追求するのって、かっこよくない」
  という感情、価値観が広まりつつあります。

  それを最も象徴するのが、東日本大震災後の被災地への支援です。
  日本全体が「被災地のために自分ができることをしたい」
  というムードになり、数多くの企業が義援金や物資などの支援を
  行い、テレビCMも被災地の支援一色になりました。

  また、東日本大震災後の復興支援に熱心に取り組む企業に対して、
  「約70%」の回答者が好意的な行動をとりたいと考えているという
  アンケート結果もあり、
  支援に熱心な企業の「製品やサービスを利用したい」という意向を
  示した回答者は「60.2%」もいます。
  (富士通総研調べ)

  つまり、「社会貢献」を商品・サービスの購入における
  判断軸として採用する傾向が強まってきています。


  2つめの変化は、インターネットの進化によるもの。

  今まではテレビや雑誌などのマスメディアによって
  消費活動のトレンド・流行を作り上げてきました。

  しかし、フェイスブックツイッターなどに代表される
  口コミ・メディアの進化により、共感性の高い物事の
  流通スピード(世の中に広まるスピード)が
  圧倒的に高まったことが挙げられます。

  つまり、企業や政府がマスメディアによって
  消費者をコントロールできた時代から
  逆に口コミ・メディアによって消費者が
  企業や政府を丸裸にできる時代になりました。

  消費者から悪い口コミを流される会社はあっという間に広まり、
  逆に、消費者が「いいね」と共感する会社も
  消費者の間で加速度的に広まっていきます。

  この加速度的に広まっていく口コミのスピードに
  「応援される会社のメカニズム」の秘密は隠されています。


●世の中の問題を語り、その解決策を示すこと

  上記のような背景を踏まえて
  「社会貢献の要素を自社の経営にどのように取り入れるか」
  「どのように応援される会社へと進化していくのか」
  それらを次回のコラムにて、企業事例を交えて
  お伝えします。

  先に要点だけをお伝えすると、ポイントは
  「世の中の問題を語り(定義し)、その解決策を示すこと」
  になります。

  たとえば、タウンキッチンという東京にある会社は
  「食事をすることの本当の豊かさが足りない」という問題を
  解決するために、地元の主婦に有給で総菜を作ってもらい
  それを地元の学生や忙しいサラリーマンに有料で
  「おすそわけ」する店舗を運営しています。

  タウンキッチンの代表は会社を立ち上げた理由を
  次のように語ります。


   「サラリーマン時代は一人暮らしをしていたのですが、
    やはり夜遅くまで仕事をしていると、食べるものがなくて。
    もちろん遅くまで開いているチェーン店はいくらでも
    あるのですが何かが足りない。

    それは栄養バランスとかオーガニックとかそういうこと
    ではなくて、食べることによって得られる“心の豊かさ”
    だと思ったんです。

    もう物の豊かさを追い求める時代じゃないな、と。
    それに関わっていた食ビジネスの価格競争に
    勝ち残るために合理化・効率化を追求した
    システムにも疑問を感じていました。

    食というよりも社会の在り方に対する違和感です。」
    (「メトロミニッツ」 No.108 インタビューより)


  そのような社会の在り方に対する疑問を問題として提示し、
  地元のシニア層の主婦の「おふくろの味」と「おすそわけ」の
  交流の場を提供することで解決策を示しています。

  それらの活動が共感を呼び、地元のお客様を呼び込んだり
  メディアからも注目され、認知度が高まり
  見込み客が加速度的に増えていくという
  「応援される会社のメカニズム」を体現しています。

  次回は、その「応援される会社のメカニズム」を
  上手に活用している企業事例をお伝え致します。
  ぜひ楽しみにして頂ければと存じます。


●今回のまとめ

  ・社会起業家や社会貢献への注目度が高まっており
   単なる流行ではなく、時代の変化として
   経営上、無視できないレベルになってきている。

  ・大きな社会問題だけでなく、身近な問題に関しても
   「世の中の問題を語り、解決策を示すこと」
   により、消費者からの共感性が高まり
   自社を応援してくれるお客様、見込み客が
   加速度的に増えていく。

スターバックスに学ぶ「ブランド構築」

  ※ベンチマーキングとは、
   「他社の優れている点を学び、自社に活用する」という経営手法です。

   本コラムでは、高い業績をあげている企業の「ベストプラクティス」を探り、
   御社の企業経営・マネジメントに活用できる内容をお届けします。


 ●スターバックスに学ぶ「ブランド構築」

  今回はスターバックスの事例を取り上げ、
  ブランド構築についてお伝えしていきます。

  住宅業界において「ブランド」への関心・ニーズは
  年々高まってきております。

  「大手に負けるのはブランドがないからだ」

  「お客様に選ばれる、口コミされるようなブランドになりたい」

  「価格競争に陥らないためにもブランドを確立したい」

  など、「ブランドがあれば、全ての悩みが解決する・・・」
  という魔法の杖としてのブランドへの期待を感じます。


  今回は“スターバックス”の事例を基に、
  ブランド構築の出発点となる
  「ブランド・コンセプトの作り方」についてお伝え致します。


●ブランド構築の出発点

  ブランドを考える際の構成要素として、

   「商品」 …スターバックスでは「コーヒー」
   「顧客との接点」…「CM、ウェブ、イベント」
   「社員・スタッフ」…「店員・スタッフ」

  の3つの構成要素があります。


  住宅業界に置き換えると、以下のように表現できます。

  「商品」・・・住宅そのもの、ローン商品、エクステリア、
        インテリア、アフターサービスなど

  「顧客との接点」・・・モデル、ショールーム、営業ツール、
            チラシ、WEB、イベントなど

  「社員・スタッフ」・・・営業、設計、工事、管理部門スタッフ、
             営業アシスタントなど


  そして、ブランドの構築において重要なポイントは、
  これらブランドの構成要素に「自社のコンセプト」や
  「コアバリュー(核となる価値)」を反映させ、
  一貫させていくことになります。


  では、そもそも自社のブランドの核となるコンセプトや
  コアバリューをどのように決めれば良いのでしょうか。

  ブランドのコンセプトを決める上で必要な
  検討項目は以下の3つになります。

  1)競争優位性

  競争優位性とは、他社との違いを明確に示すものであり
  自社に「富をもたらす源泉」となるものです。

  スターバックスで言えば、
  創業当初は「エスプレッソ主体のテイクアウトメニュー」による

  「他にない美味しいコーヒー」
  「それを持ち歩くお洒落さ」
  「心地よい空間でのひととき」

  といった、「新しいライフスタイルの創出」が
  競争優位性となり、“シアトルスタイル”という
  コーヒーの楽しみ方の火付け役となりました。

  また、スターバックスは、業績がひどく落ち込んだ時にも
  自社の競争優位性であるコーヒーの品質や社員教育のコストを
  カットすることなく、逆に投資することで業績を回復させています。

  つまり、「過去の自社の競争優位性とは何だったのか」を
  徹底的に追求した上で過去に過度に縛られることなく、
  「何を守り、何を捨てるべきか」を精査することが、
  ブランドのコンセプトを決める上で重要となります。


  2)価値観

  「価値観」というと不思議に感じるかもしれませんが
  スモールブランドを築こうとする会社にとって
  必要不可欠なものとなります。

  これは、創業者や経営に携わっている方の
  「価値観(事業への想い)」とほぼ同義だと捉えてください。

  競争優位性をブランドのコンセプトに昇華する際には、
  経営者の価値観(事業への想い)を深掘りし、
  それをコンセプトに反映する必要があります。

  「価値観」がコンセプトに反映されていないと、
  経営者自身の「ブランドに掛ける想い」が弱くなり、
  結果として、組織に浸透させることが出来ずに
  ブランドが「ただの看板」として終わってしまうからです。

  スターバックスの場合、
  「素晴らしいコーヒーと空間・場を提供すること(競争優位性)」で
  「人生の幸せなひとときを提供したい(価値観)」という
  想いが、出店計画から店舗設計等、全ての判断基準になっています。

  その姿勢が端的に表れているのが、フランチャイズ展開をせずに
  直営店のみで経営を行うという事業展開のやり方です。



  3)共感性

  最後は、周りの人(お客様や社員)から「いいね!」と
  思ってもらうための「共感性」です。

  全てのブランドには、「共感性」があります。

  スターバックスの場合は、他社と比較してコーヒーの価格が
  高いにも関わらず、多くのお客様や社員をファンに育てています。

  それはお客様や社員が、スターバックスが提供する
  「スターバックスのあるライフスタイル(空間・時間)」に
  “共感”しているからこそであり、スターバックス
  この“共感”を生むために徹底的に考え抜いた
  サービスの設計を行い、現場で実行しているのです。

  この“共感性”を検討する上で必要なのは、
  実は「対人感受性」や「人との関わり方」などの
  属人的・直感的な要素になります。

  昔から「経営は人なり」と言われ続けており、
  松下幸之助も「事業は人なり」と言い続けていましたが、
  このお客様や社員から「共感性」を得られるかどうかが
  お客様に支持されるブランドになるかどうかの別れ道になります。



●ブランドコンセプトを特定せよ

  ブランド構築と言うと
  効果的な広告宣伝を思い浮かべる方も多いと思います。
  もちろん、それも必要です。

  ただし、ブランドコンセプトが特定できていない状態で
  広告宣伝費を投下し、一時的に良いイメージを
  消費者に与えたとしても中長期的な視点で見ると、

  「儲からない」
  「長続きしない」
  「社員がついてこない、共感しない」

  という事態に陥り、結局は事業が安定しないという
  状況に陥ってしまいます。

  しっかりとしたブランドを構築し、
  エリアで愛され続ける会社に育てたいという経営者様は、
  まずはブランドコンセプトの特定から始めてみてください。

  とは言え、ブランドコンセプトの特定は、
  1人で実施するには非常に難しい課題でもありますので
  信頼できる相手に、ご相談していただくことをお勧めします。


●今回のベンチマーク実践(実践期限:1日間)

  ・自社のブランド・コンセプトを
   「競争優位性」「価値観」「共感性」の3つから検討する、
    もしくは相談する時間をスケジューリングする。

  ・また、その3つについて相談できる相手を
   それぞれ書き出してみる。

キユーピーに学ぶ「ブランド・イメージの作り方」

  ※ベンチマーキングとは、
   「他社の優れている点を学び、自社に活用する」という経営手法です。

   本コラムでは、高い業績をあげている企業の「ベストプラクティス」を探り、
   御社の企業経営・マネジメントに活用できる内容をお届けします。


 ●キユーピー(株)に学ぶ「ブランド・イメージの作り方」

  今回はキユーピーの事例を取り上げながら
  広告宣伝などによる「ブランド・イメージの作り方」
  についてお伝えしていきます。

  キユーピーと言えば、
  キユーピーマヨネーズという商品が
  最もメジャーな商品となります。

  商品説明が必要ないほど、ほとんどの全ての消費者に
  認知されていますし、難なくあのポリボトルの
  商品シルエットを思い浮かべることが出来ます。

  (キャラクターのキユーピーちゃんの方を
   思い浮かべる方もいるかもしれません)

  ちなみに家庭用のマヨネーズ市場のシェアは
  キユーピーが約8割を占めるほど
  独占的なシェアを獲得しています。

  どのように「キユーピー」=「マヨネーズ」、
  「マヨネーズ」=「キューピー」という
  ブランド・イメージの構築に成功したのか。

  ※住宅業界で言えば、
   「地元の住宅会社」=「○○工務店(自社)」、
   ということになるでしょう。

  その成功要因についてお伝えしていきます。


●「宣伝は資本である」

  キユーピー創始者中島董一郎氏が
  キユーピーマヨネーズの発売を開始したのが1925年。

  その当時から中島氏は
  「宣伝は資本である」というこだわりを持ち、
  経営に臨んでいました。

  顧客接点にかかわる全てのものに対して、
  企業としての姿勢、「キユーピーらしさ」を一貫して伝え
  そのイメージを長きに亘って消費者に
  植え付けていこうと画策し、
  発売当初から新聞の30行の突き出し広告の出稿を始めました。

  その突き出し広告は80年以上経った今でも続けられています。

  その広告は決して目立つ存在でないけれど、継続的な視覚への
  訴えかけは、いい意味で「変わらない」企業イメージを
  人々の潜在意識の中に蓄積していきます。

  これも「宣伝は資本である」という創始者の考えが
  明確に貫かれています。

  また、他にもテレビCMやラジオCMなどで俳優の福山雅治が出演している
  キユーピーのCMをご覧になった方もいるでしょう。

  自社のブランド・イメージを宣伝によって作り上げ、
  そのイメージが自社の資本になっていく。

  そんなブランド・イメージの作り方について
  これから具体的なお伝えしていきます。

  ちなみに、広告宣伝によるブランド・イメージの構築は
  一見、時代に逆行しているという見方もできます。

  これだけインターネットが普及し、口コミによって
  消費者が購買行動を決定づける現代に、広告宣伝だけで
  ブランド・イメージは築くことはできない。
  本当に良い商品を作り上げることが
  一番の宣伝になるのではないか、と。

  もちろん、その見方はその通りです。

  しかし、なぜ大手企業が未だにテレビCMを打ち続け、
  雑誌広告に出稿するのか。
  未だに東京の渋谷には企業の看板で溢れています。
  住宅会社もチラシによって一定の集客数を確保します。
  (もちろん消費者も一定の影響をその宣伝から受けることになります)

  大切なのは、「宣伝の影響力」や「効果的な宣伝方法」が
  変わっているのであって、宣伝そのものが力を失っている
  訳ではないということ。

  インターネット媒体の方が影響力が高まってきたことや
  口コミを重視したフェイスブック、もしくは
  リアルの紹介活動による宣伝などの方が効果的など
  手法論が変わってきたのです。

  少し前置きが長くなってしまいましたが
  手法論が変化してきた現代においても活用できる
  キユーピーの取り組み、ブランド・イメージの作り方に
  ついてお伝えします。


●当初から意識していたブランド化

  キユーピーのブランド・イメージの作り方について
  3点に絞ってお伝えします。

  1点目は、「一貫したビジュアル活用」です。

  たとえば、現代でもキャラクターとして活用される
  キユーピー人形は、実は1925年の商品発売時に
  デザインされ、今なお使い続けられています。

  当時では商品マークのデザイン化として斬新な
  試みでしたが、その商品ブランドを象徴するものとして
  現在では、非常に重要なビジュアルになっています。
  (「親しみやすさ」による消費者マインドの支配は
   キューピー人形の大きな功績です。)

  実際に自社のイメージキャラクターを作り、
  広告やホームページに活用されていらっしゃる
  住宅・不動産会社様もあるかと存じます。

  また、キユーピーマヨネーズのポリボトルの容器の
  シルエットも効果的なビジュアル活用です。

  元々、瓶詰めだったキユーピーマヨネーズは、
  1985年に現在のようなシルエットの容器になりました。
  以来、幾多の改良が加えられて、ポリボトル自体の機能は
  どんどん進化しているにもかかわらず、
  容器・パッケージのデザインを大幅に変えていません。

  だからこそ、キユーピーマヨネーズと言えば
  「チューブ状のポリボトル」というイメージが
  老若男女を問わずに浸透しており、
  キユーピーマヨネーズというブランドイメージを
  消費者に根付かせています。

  住宅業界だと、casa cube(カーサキューブ)と言えば
  あの白い真四角の住宅が思い浮かぶように
  商品設計そのものに差別化できるビジュアルを
  採用することで人の記憶に残りやすくなります。


  2点目は、「商品の提案ではなく、食べ方の提案」
  をしていること。

  特にテレビCMを見ている方は実感いただけると思いますが
  1970年代から「野菜の食べ方」をメインに打ち出した
  キューピーの広告宣伝がほとんどです。

  もしテレビCMが思い浮かばない方は
  キユーピーのホームページでCMをご覧頂くことができます。
   http://www.kewpie.co.jp/know/cm/tvcm.html

  マヨネーズを使うことで、

   身体に良い野菜を美味しく食べられる
   野菜嫌いの子も自然と好きになるなど

  商品そのものではなく、付加される機能に着目することで
  新しい需要を喚起させることができます。

  住宅業界でイメージするならば
  正に「ライフスタイル提案」になります。

  「住宅商品の提案」をするのではなく、
  「住まい方の提案」をすることで
  消費者からの信頼を得たり
  消費者の需要喚起・啓蒙につながっていきます。

  ライフスタイル提案と聞くと当たり前に聞こえるかもしれませんが
  意外と自社のホームページが商品説明に終始している・・・
  という例はよくあります。


  さて、3点目は「企業姿勢の明示」です。

  たとえば、1973年にマスコミが
  「あるマヨネーズメーカーが品質の悪いオイルを使用している」
  と報道した時に、キユーピーは真っ先に「安全宣言」と謳った
  新聞広告を出しています。

  新聞の一面を使って「宣誓。キユーピーマヨネーズは安全です」
  というキャッチフレーズの下に、キユーピー人形が
  ポーズをとっている広告が1つ。

  「国家の指示による公的な機関で分析した結果
   キユーピーマヨネーズの安全性が保証されました」
  というキャッチフレーズの下に、実際の分析証明書を
  のせた広告が1つ。2パターンの広告が即座に打たれました。

  どんな業種においても、消費者やマスコミからありもしない
  事象を取り上げられ、攻撃されるという事態に陥るケースはあります。
  (住宅業界もしかりです)

  外部からもたらされる「リスク」に関して
  企業としてどのように対応し、自社のチャンスを広げるのか。

  その企業姿勢を宣伝に組み込むことで
  企業への信頼度が変わってきます。



●ブランド・イメージの構築“も”大切である

  今までお伝えしてきた「広告宣伝」は
  経営の一側面でしかありませんし、
  消費者のブランド体験の一側面でしかありません。

  ただ、だからと言って
  「良い商品を作れば売れる」
  「良い会社は存続・発展する」
  という訳でもありません。

  大切なのは、ブランド・イメージの構築を
  経営の重要な要素・ファクターとして認識し
  戦略的、意欲的に取り組んでいるかどうか、ということです。
  (逆にそればかり得意になってもいけませんが・・・)

  自社のブランド・イメージの構築に成功し、
  ブラッシュアップし続けている住宅会社は、
  集客に強く、伸びているというのは、
  ご理解いただけると思います。

  ぜひ、自社の宣伝について見直すきっかけとして
  お考えいただければ幸いです。

  まずは、自社のチラシやホームページを確認すること、
  他にも、営業ツールや紹介活動についても宣伝と捉え、
  先ほどの「3点の取り組み」が出来ているかどうか
  ご確認することから始めてみてください。

  また、ツイッターフェイスブックをされているのであれば
  流行のソーシャルメディアでどのように自社のブランド・イメージを
  植え付けていくのか、ということも考えていただければと存じます。



●今回のベンチマーク実践(実践期限:1日間)

  ・自社のブランド・イメージの構築について
   どんな媒体で展開し、どのような内容で取り組んでいるか、
   キユーピーの3点の取り組みと照らし合わせながら書き出す。

  ・書き出したものに対して、改善点、アイデアなど思い浮かんだら
   それを実践するためのスケジューリングを行う。

  ※ベンチマーキングとは、
   「他社の優れている点を学び、自社に活用する」という経営手法です。

   本コラムでは、高い業績をあげている企業の「ベストプラクティス」を探り、
   御社の企業経営・マネジメントに活用できる内容をお届けします。


 ●キユーピー(株)に学ぶ「ブランド・イメージの作り方」

  今回はキユーピーの事例を取り上げながら
  広告宣伝などによる「ブランド・イメージの作り方」
  についてお伝えしていきます。

  キユーピーと言えば、
  キユーピーマヨネーズという商品が
  最もメジャーな商品となります。

  商品説明が必要ないほど、ほとんどの全ての消費者に
  認知されていますし、難なくあのポリボトルの
  商品シルエットを思い浮かべることが出来ます。

  (キャラクターのキユーピーちゃんの方を
   思い浮かべる方もいるかもしれません)

  ちなみに家庭用のマヨネーズ市場のシェアは
  キユーピーが約8割を占めるほど
  独占的なシェアを獲得しています。

  どのように「キユーピー」=「マヨネーズ」、
  「マヨネーズ」=「キューピー」という
  ブランド・イメージの構築に成功したのか。

  ※住宅業界で言えば、
   「地元の住宅会社」=「○○工務店(自社)」、
   ということになるでしょう。

  その成功要因についてお伝えしていきます。


●「宣伝は資本である」

  キユーピー創始者中島董一郎氏が
  キユーピーマヨネーズの発売を開始したのが1925年。

  その当時から中島氏は
  「宣伝は資本である」というこだわりを持ち、
  経営に臨んでいました。

  顧客接点にかかわる全てのものに対して、
  企業としての姿勢、「キユーピーらしさ」を一貫して伝え
  そのイメージを長きに亘って消費者に
  植え付けていこうと画策し、
  発売当初から新聞の30行の突き出し広告の出稿を始めました。

  その突き出し広告は80年以上経った今でも続けられています。

  その広告は決して目立つ存在でないけれど、継続的な視覚への
  訴えかけは、いい意味で「変わらない」企業イメージを
  人々の潜在意識の中に蓄積していきます。

  これも「宣伝は資本である」という創始者の考えが
  明確に貫かれています。

  また、他にもテレビCMやラジオCMなどで俳優の福山雅治が出演している
  キユーピーのCMをご覧になった方もいるでしょう。

  自社のブランド・イメージを宣伝によって作り上げ、
  そのイメージが自社の資本になっていく。

  そんなブランド・イメージの作り方について
  これから具体的なお伝えしていきます。

  ちなみに、広告宣伝によるブランド・イメージの構築は
  一見、時代に逆行しているという見方もできます。

  これだけインターネットが普及し、口コミによって
  消費者が購買行動を決定づける現代に、広告宣伝だけで
  ブランド・イメージは築くことはできない。
  本当に良い商品を作り上げることが
  一番の宣伝になるのではないか、と。

  もちろん、その見方はその通りです。

  しかし、なぜ大手企業が未だにテレビCMを打ち続け、
  雑誌広告に出稿するのか。
  未だに東京の渋谷には企業の看板で溢れています。
  住宅会社もチラシによって一定の集客数を確保します。
  (もちろん消費者も一定の影響をその宣伝から受けることになります)

  大切なのは、「宣伝の影響力」や「効果的な宣伝方法」が
  変わっているのであって、宣伝そのものが力を失っている
  訳ではないということ。

  インターネット媒体の方が影響力が高まってきたことや
  口コミを重視したフェイスブック、もしくは
  リアルの紹介活動による宣伝などの方が効果的など
  手法論が変わってきたのです。

  少し前置きが長くなってしまいましたが
  手法論が変化してきた現代においても活用できる
  キユーピーの取り組み、ブランド・イメージの作り方に
  ついてお伝えします。


●当初から意識していたブランド化

  キユーピーのブランド・イメージの作り方について
  3点に絞ってお伝えします。

  1点目は、「一貫したビジュアル活用」です。

  たとえば、現代でもキャラクターとして活用される
  キユーピー人形は、実は1925年の商品発売時に
  デザインされ、今なお使い続けられています。

  当時では商品マークのデザイン化として斬新な
  試みでしたが、その商品ブランドを象徴するものとして
  現在では、非常に重要なビジュアルになっています。
  (「親しみやすさ」による消費者マインドの支配は
   キューピー人形の大きな功績です。)

  実際に自社のイメージキャラクターを作り、
  広告やホームページに活用されていらっしゃる
  住宅・不動産会社様もあるかと存じます。

  また、キユーピーマヨネーズのポリボトルの容器の
  シルエットも効果的なビジュアル活用です。

  元々、瓶詰めだったキユーピーマヨネーズは、
  1985年に現在のようなシルエットの容器になりました。
  以来、幾多の改良が加えられて、ポリボトル自体の機能は
  どんどん進化しているにもかかわらず、
  容器・パッケージのデザインを大幅に変えていません。

  だからこそ、キユーピーマヨネーズと言えば
  「チューブ状のポリボトル」というイメージが
  老若男女を問わずに浸透しており、
  キユーピーマヨネーズというブランドイメージを
  消費者に根付かせています。

  住宅業界だと、casa cube(カーサキューブ)と言えば
  あの白い真四角の住宅が思い浮かぶように
  商品設計そのものに差別化できるビジュアルを
  採用することで人の記憶に残りやすくなります。


  2点目は、「商品の提案ではなく、食べ方の提案」
  をしていること。

  特にテレビCMを見ている方は実感いただけると思いますが
  1970年代から「野菜の食べ方」をメインに打ち出した
  キューピーの広告宣伝がほとんどです。

  もしテレビCMが思い浮かばない方は
  キユーピーのホームページでCMをご覧頂くことができます。
   http://www.kewpie.co.jp/know/cm/tvcm.html

  マヨネーズを使うことで、

   身体に良い野菜を美味しく食べられる
   野菜嫌いの子も自然と好きになるなど

  商品そのものではなく、付加される機能に着目することで
  新しい需要を喚起させることができます。

  住宅業界でイメージするならば
  正に「ライフスタイル提案」になります。

  「住宅商品の提案」をするのではなく、
  「住まい方の提案」をすることで
  消費者からの信頼を得たり
  消費者の需要喚起・啓蒙につながっていきます。

  ライフスタイル提案と聞くと当たり前に聞こえるかもしれませんが
  意外と自社のホームページが商品説明に終始している・・・
  という例はよくあります。


  さて、3点目は「企業姿勢の明示」です。

  たとえば、1973年にマスコミが
  「あるマヨネーズメーカーが品質の悪いオイルを使用している」
  と報道した時に、キユーピーは真っ先に「安全宣言」と謳った
  新聞広告を出しています。

  新聞の一面を使って「宣誓。キユーピーマヨネーズは安全です」
  というキャッチフレーズの下に、キユーピー人形が
  ポーズをとっている広告が1つ。

  「国家の指示による公的な機関で分析した結果
   キユーピーマヨネーズの安全性が保証されました」
  というキャッチフレーズの下に、実際の分析証明書を
  のせた広告が1つ。2パターンの広告が即座に打たれました。

  どんな業種においても、消費者やマスコミからありもしない
  事象を取り上げられ、攻撃されるという事態に陥るケースはあります。
  (住宅業界もしかりです)

  外部からもたらされる「リスク」に関して
  企業としてどのように対応し、自社のチャンスを広げるのか。

  その企業姿勢を宣伝に組み込むことで
  企業への信頼度が変わってきます。



●ブランド・イメージの構築“も”大切である

  今までお伝えしてきた「広告宣伝」は
  経営の一側面でしかありませんし、
  消費者のブランド体験の一側面でしかありません。

  ただ、だからと言って
  「良い商品を作れば売れる」
  「良い会社は存続・発展する」
  という訳でもありません。

  大切なのは、ブランド・イメージの構築を
  経営の重要な要素・ファクターとして認識し
  戦略的、意欲的に取り組んでいるかどうか、ということです。
  (逆にそればかり得意になってもいけませんが・・・)

  自社のブランド・イメージの構築に成功し、
  ブラッシュアップし続けている住宅会社は、
  集客に強く、伸びているというのは、
  ご理解いただけると思います。

  ぜひ、自社の宣伝について見直すきっかけとして
  お考えいただければ幸いです。

  まずは、自社のチラシやホームページを確認すること、
  他にも、営業ツールや紹介活動についても宣伝と捉え、
  先ほどの「3点の取り組み」が出来ているかどうか
  ご確認することから始めてみてください。

  また、ツイッターフェイスブックをされているのであれば
  流行のソーシャルメディアでどのように自社のブランド・イメージを
  植え付けていくのか、ということも考えていただければと存じます。



●今回のベンチマーク実践(実践期限:1日間)

  ・自社のブランド・イメージの構築について
   どんな媒体で展開し、どのような内容で取り組んでいるか、
   キユーピーの3点の取り組みと照らし合わせながら書き出す。

  ・書き出したものに対して、改善点、アイデアなど思い浮かんだら
   それを実践するためのスケジューリングを行う。

スティーブ・ジョブズに学ぶ「圧倒的な成果創出」の生み出し方

  ※ベンチマーキングとは、
   「他社の優れている点を学び、自社に活用する」という経営手法です。

   本コラムでは、高い業績をあげている企業の「ベストプラクティス」を探り、
   御社の企業経営・マネジメントに活用できる内容をお届けします。


 ●スティーブ・ジョブズに学ぶ「圧倒的な成果創出」の生み出し方

  今回は番外編としてアップル創業者の
  スティーブ・ジョブズ氏について取り上げます。

  番外編としている理由は、

  1)企業ではなく経営者個人にフォーカスを当てていること
  2)経営領域に限らず、人生で何を達成するのかという
   より幅広い領域にフォーカスを当てていること

  の2点が理由になります。

  スティーブ・ジョブズ氏(以下ジョブズ氏)の訃報ニュースを
  ほとんどの方がお聞きられているのでジョブズ氏について
  ご説明する必要はないかと思いますが念のためにご説明すると、
  住宅営業のツールとして注目を浴びているiPadアイパッド)や
  携帯電話のiPhone(アイフォン)を作り出したアップル社の
  創業者がジョブズ氏です。

  「マッキントッシュ」というパソコンや
  「iPod」という音楽業界の構造を変えた音楽機器、
  「iPhone」というスマートフォン
  「iPad」というタブレット端末など
  今までにない製品を生涯に亘って生み出し続けてきた
  ジョブズ氏の「圧倒的な成果創出」の生み出し方について
  今回のコラムではお伝えします。


●「圧倒的な成果創出」を生み出す、たった1つの成功要因

  「圧倒的な成果創出」とは何でしょうか?

  経営で言えば、市場シェアの独占、高い利益率、業界トップの売上規模、
  世の中にない革新的な製品開発とその普及・・・
  様々な切り口があるかと思います。

  ジョブズ氏が経営するアップル社は、
  「マッキントッシュ」「iPod」「iPhone」「iPad」など
  革新的な製品を世に広めたことはもちろん、
  企業価値が2010年には2000億ドル(約18兆円)に達し、
  マイクロソフト社を抜いたことも「圧倒的な成果創出」と言えます。

  ※パソコン市場やOS市場ではマイクロソフト社に劣っていますが
   高額パソコン市場では91%を占有というデータもあります
   (2009年 NPD Group調べ)

  また、世にない画期的な製品を広めることで
  ジョブズ氏の言う「世界に衝撃を与えること」も
  圧倒的な成果と言えるでしょう。

  では、ジョブズ氏はどのような卓越した経営手腕で
  数々の圧倒的な成果を創出してきたのでしょうか。

  デザイン性の高い製品開発、細部にまでこだわるトータル・コントロール
  優秀な人材を口説き落とす人心掌握術、周りの人を巻き込むビジョン、
  卓越な先見性、尽きることのない情熱・・・

  様々な要因があり、それらが有機的に結びついていることは
  もちろんその通りです。

  しかし、ジョブズ氏の圧倒的な成果創出の成功要因を
  たった1つ挙げるとすれば、何なのか。

  その成功要因を、1996年のアップル再生のエピソードを
  基にお伝えします。


ジョブズ氏の「ノー(NO)」によって再生したアップル社

  1976年にアップルを設立したジョブズ氏は
  1985年に自分が雇った経営幹部にクーデターを起こされ
  アップルから追放されています。

  ※自分が作った会社からクビになるというのは
   創業者の方であればどれくらい有り得ないことか
   ご想像いただけると思います。

  アップルを追放された経緯については別の機会に譲りますが
  追放されてから11年後の1996年、
  低迷したアップルの業績を再生させるために
  ジョブズ氏はアップルの経営に呼び戻されます。

  ※ちなみに、11年の間にジョブズ氏は、映画「トイ・ストーリー」などを
   手がけるピクサー社を設立し、成功を収めていました。

  アップルに復帰したジョブズ氏が企業再生のために
  徹底的に取り組んだのは、アップル社に必要なものと
  無駄なものを取捨選択することでした。

  その頃のアップルは、マイクロソフトのように
  PC市場の寡占状態を作り出すべく
  様々な領域に事業展開し、製品数・プロジェクト数ともに
  多岐に亘っていました。

  そこでジョブズ氏は徹底的な社内調査を実施し、
  主力製品をプレミアム・コンピュータ(高額コンピュータ)
  に絞り込み、製品ラインもたった4つに絞り込んでいきました。

  高級車のようにハイエンド層に向けた、デザインと品質に
  すぐれたマシン、それがジョブズ氏の選択であり、戦略だったのです。

  その結果、1998年に投下した「iMac」というパソコンが
  大ヒットし、販売台数600万台、歴史上最も売れた
  コンピュータになりました。

  ※当時の販売価格178,000円に対して600万台ですので、
   製品売上1兆円を越えます。

  フルーツのような鮮明な色合いで、美しい曲線美の「iMac」は
  世の中で一躍話題にもなり、記憶に残っている方もいるかもしれません。

  自社の本質的な競争優位にフォーカスし、
  それ以外に「ノー(NO)」を突きつけることが
  アップル再建でジョブズ氏が徹底したことだったのです。


●数ある選択肢の中から、何に「フォーカスする」のか?

  ジョブズ氏の成功要因をたった1つ挙げるとすれば
  それは、「フォーカスする(焦点を当てる)」ことが挙げられます。

  特筆すべきなのは、
  経営のみならず、ジョブズ氏自身の人生においても
  フォーカスすることを徹底したことです。

  「世界を変える、世界に衝撃を与える」
  という自身の信念にフォーカスすることで
  画期的な製品を世に生み出し、広めることに
  自分自身の人生を捧げてきました。

  iMaciPodiPhoneiPadという世にない製品を生み出し、
  その製品や信念に共感するファンが世界中に存在します。

  ※このことからも分かるように、単に製品を絞り込むだけが
   決して「フォーカス」することの本質ではありません。

  経営であれば、限りあるヒト・モノ・カネを
  何に「フォーカスする」のか。

  人生であれば、限りある時間という資源を
  何に「フォーカスする」のか。

  それらが企業姿勢、経営者の姿勢となり
  ひいてはその企業、経営者のブランドに
  つながっていきます。

  そして、その企業が目指すべき「圧倒的な成果」を
  生み出していくことになります。


●御社は何にフォーカスしていますか?

  「私の会社は〜〜にフォーカスしている」

  もしくは

  「私は〜〜にフォーカスしている」

  と即答できる企業様や社員様はどれ位いらっしゃるでしょうか。

  企業で言えば、その一言が戦略そのものであり、
  言葉を換えてビジョンや経営理念という場合もあります。

  また、フォーカスすることとは
  他の選択肢にノーを突きつけることであり
  他の可能性を捨て去ることです。

「集中するというのは、集中すべきものにイエスと言う
  ことだと誰もが思っている。
  本当はまったく違う。
  それはほかのたくさんのすぐれたアイデアにノーと言うことだ」

  (※ジョブズ氏の発言より抜粋)


  もちろん何にフォーカスするのかは大きな意志決定を伴いますが
  その意志決定を経ていること自体が
  他社にない競争優位性を生み出すことになるのです。

  『7つの習慣』で著名なスティーブン・R・コビ−博士も
  フォーカスすることの重要性を著書で語っているので
  同じような話を聞いた方もいらっしゃるかもしれません。

  そのような方はどれ位実践できているのかという視点で
  ぜひ自社、ご自身に問いかけていただければ幸いです。


  最後に、以下の2つの質問でコラムを締めくくらせていただきます。


  「御社は、何にフォーカスしていますか?」


  「貴方は、何にフォーカスしていますか?」

サイゼリヤに学ぶ「価格競争力」の作り方

  ※ベンチマーキングとは、
   「他社の優れている点を学び、自社に活用する」という経営手法です。

   本コラムでは、高い業績をあげている企業の「ベストプラクティス」を探り、
   御社の企業経営・マネジメントに活用できる内容をお届けします。


 ●サイゼリヤに学ぶ「価格競争力」の作り方

  今回は、ファミリーレストランサイゼリヤを取り上げ
  「価格競争力」について考察してまいりたいと思います。

  サイゼリヤというレストランは関東圏内にお住まいの方で
  あればご利用されたり看板を見かけたことがあるかと思います。

  1968年にイタリア料理店として創業したサイゼリヤ
  低価格メニューの提供で飛躍的に店舗数を拡大、
  2000年には東証一部上場を果たしました。

  国内店舗数860店舗を有し、中国など海外にも
  約80店舗を展開しています。(2011年2月末現在)

  サイゼリヤの最大の強みは
  その圧倒的な価格競争力です。

  売れ筋No.1の299円・ミラノ風ドリアは
  1000回以上も改良し、その価格力で
  同社の核商品の一つとなっています。

  事業売上は(顧客数)×(顧客単価)×(購買頻度)で
  算出されますが、
  飲食業の事業売上に大きな影響を及ぼすのは
  (顧客数)の増減になります。

  そのため、飲食業界では(顧客数)を増やすことに
  直結する価格競争力の作り方が発展しました。
  その代表的な企業がサイゼリヤです。

  単なる低価格、安売りでは
  「安かろう、悪かろう」と顧客が離れていく時代です。
  どのように顧客に提供する価値を高めつつ
  最小限の価格でご購入いただけるようにするのか。

  その価格競争力の作り方についてお伝えしていきます。


 ●お値打ち感の公式

  お値打ち感とは、特定の商品について
  「お客様が払ってもいいと思う価格(Willing To Pay:以下WTP)」
  より「実価格」が低い時に生じます。

  たとえば、120円のジュースがスーパーで70円で販売されていれば
  消費者は50円分の「お値打ち感」を感じます。

  1万円相当のフルコースディナーを
  5000円で提供してくれるレストランがあれば
  5000円分の「お値打ち感」を感じます。


  つまり、「お値打ち感」とは
 「お客様が払ってもいいと思う価格:WTP」−「実価格」
  の公式で表すことができ、そのギャップが大きいほど
  「お値打ち感」は最大化し、価格競争力が創出されます。

  その公式から考えると、
  価格競争力を上げるために「実価格」を下げても
 「お客様が払ってもいいと思う価格:WTP」、つまり商品の品質や価値も
  一緒に下げてしまっては、ギャップが少なくなり
  お値打ち感は大きくなりません。

  では、サイゼリヤがどのように
  お値打ち感を最大化しているのかを
  具体的には説明していきます。


 ●真の生産性向上とは

  サイゼリヤが価格競争力を創出するために
  重要視しているのが、商品価値を下げるのではなく、
  「無駄を無くす」ことを徹底的に突き詰めていくことです。

  その「無駄を無くす」という発想は、
  大きく2つの方向性に分かれます。

  その1つが、絞り込みによる核商品の開発であり、
  もう1つが、細かな改善活動の積み上げです。

  順にご説明していきます。

  1つ目はもっとも効果的な方法で、
  何かを改善しようと考えるのではなく
  今まで幅広くやっていたこをやめてしまうことです。

  飲食店ならメニュー数を絞ることが
  一番無駄を減らせます。
  同時に、自分の店にしか出せない
  という強いメニューを作ることが重要です。

  サイゼリヤであれば299円の「ミラノ風ドリア」が
  それに当たります。

  絞り込んで商品を提供することで仕入れロスが減り、
  作業効率も良くなる。
  無駄を省くので利益もドンドン出る。
  そうなってきたら利益の一部は、
  お客様に還元すべきだから実価格を値下げする。
  するとさらにお客様に喜ばれて顧客数が増える。

  決して初めに安売りありきではなく、
  「無駄を無くす」という発想からスタートしていることがポイントです。

  逆に価格が安くても価値を伴わない商品は一時的に注目されることは
  あっても長続きすることはありません。

  では、住宅業界で絞り込みによる核商品の開発は
  どのように活用できるか?

  たとえば注文住宅の自由設計を、もっともお客様が喜ぶ標準パターンに
  絞り込んで提案したり、もしくは規格が決まっている
  コンパクトハウスなどの商品を開発することが挙げられます。


  2つめの細かな改善活動の積み上げですが
  こちらは業務の流れを改善することは
  もちろん、ビジネス全体の流れを改善することも含まれます。

  サイゼリヤの場合、原材料費を下げずに実価格を下げていくために
  製造工程の川上から川下までの全行程を自社で管理しています。

  具体的には、野菜や米は福島県の自社農場で育成・収穫、
  ハンバーグのパテやホワイトソースはオーストラリアの自社工場で
  地元食材を使用して生産など、食材の多くを自社で製造しています。
  それらの食材をいったん「カミサリー(工場)」に集めて調理し
  各店舗に搬送しているのです。

  イメージとしてはハウスメーカー
  「生産から販売まで一貫して手がける生販一体」と同じです。

  自社のビジネスを垂直統合することでビジネスの
  工程全体から無駄を省き、ビジネス全体のコストを削っています。

  たとえば、サイゼリヤでは「カミサリー(工場)」で食材を
  加工する際に、一番最初の工程での品質チェックを徹底しています。
  最終的に不良品になってしまうものを何度も加工してしまうコストが
  省けますし、品質も初期段階で一定水準に保つことができます。

  また、業務の改善でいえば、
  業務の効率的な流れを開発して標準パターンにしたり
  効率化を図れるツールを導入するなどがあります。


●異業種のノウハウを自社に移植する

  今回は「価格競争力」というテーマで
  サイゼリヤの事例をお伝えしてきましたが
  いかがでしたでしょうか。

  いくつか自社で活用できる点を
  発見して頂いたかもしれませんし、
  すでに自社で取り組んでいることもあるかもしれません。

  コンパクトハウスや企画住宅など、絞り込みによる商品開発
  集客コストが低く、歩留まりが高い紹介営業の活動
  自社の勝ちパターンに基づいた営業手法の標準化

  ・・・他にも様々な取り組みがあるかと思いますので
  ぜひ自社に合った方法を検討して頂ければと存じます。

  単なる安売りではなく、
  「無駄なコストを削って利益をお客様に還元する」
  という発想で自社の価格競争力を考え直す
  きっかけとなれば幸いでございます。


  (※参考文献:『おいしいから売れるのではない
          売れているのがおいしい料理だ』
              :日経BP社 正垣泰彦 著)


 ●今回のベンチマーク実践(実践期限:1日間)

  ・自社の経営活動全般で、お客様に提供する価値を下げずに
   無駄を省ける工程や作業がないか、思い浮かんだもの書き出す

  ・書き出した項目から実現可能なものに○をつけ
   実施するスケジューリングを行う

ザッポスに学ぶ「口コミ・リピート」の起こし方

  ※ベンチマーキングとは、
   「他社の優れている点を学び、自社に活用する」という経営手法です。

   本コラムでは、高い業績をあげている企業の「ベストプラクティス」を探り、
   御社の企業経営・マネジメントに活用できる内容をお届けします。


 ●ザッポスに学ぶ「口コミ・リピート」の起こし方

  今回は、米国の著名企業である「ザッポス」という会社を
  取り上げさせていただきます。

  「ザッポスの奇跡」「ザッポスの伝説」などの書籍がベストセラーとなり、
  日本でも話題になりましたので、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。

  ザッポスは、インターネット上で靴や洋服などを販売する
  「オンライン小売会社」です。
  (本をインターネットで販売するアマゾンの
   「靴屋版」だと思っていただければ大丈夫です。)

  ザッポスは1999年に創業され、米国最大のオンライン小売会社に成長し、
  2009年11月に12億ドル(約1000億円)の評価額でアマゾン・ドットコムに
  売却されました。
  (米国では創業会社を売却し、莫大な資産を手に入れることは
   一般的な成功ストーリーです。)

  ザッポスの名が、世の中に知れ渡ったのは、
  顧客を感動満足させる「カスタマーサービス」にあります。

  例えば、「カスタマーサービス」にまつわるこんなエピソードがあります。


  ある女性が病床の母親のためにザッポスで何足か靴を買ってあげたが、
  母親の病状が悪化して亡くなってしまいました。

  悲しみがさめやらぬなか、ザッポスから靴の具合を尋ねるEメールが届きました。
  母親が亡くなってしまったので靴を返品したいこと、
  返品期限を過ぎてしまったかもしれないが、
  もう少し待ってもらいたいことをメール返信したところ、
  すぐに「宅配の集荷サービスを送ります」という反応がありました。

  ザッポスでは、返品時も送料無料サービスを行っていますが、
  通常は購入者が集荷場まで靴を持っていかなければなりません。

  規則を曲げて自宅への集荷を手配してくれたことに女性は驚き、感謝しました。

  しかし、話はそこで終わりません。

  翌日、女性の玄関先にお悔やみの花束が届けられ、
  ザッポスからのメッセージカードが添えられていたそうです。

  女性は、自身の体験をブログに書きました。

  「感極まって、どっと涙がこぼれました。
   人の親切にはもとから弱い私ですが、
   今まで人様からしてもらったことの中で、
   これ以上に心を打たれたことを思い出せません」

  ブログの最後は以下のように締めくくられていました。
  「もしネットで靴を買うのだったら、ザッポスから買うことをお勧めします」(※




 ●なぜカスタマーサービスに力を入れるのか

  ザッポスは自らを「靴を売ることになった“顧客サービス企業”」と
  称するほどカスタマーサービスを大切にすることで知られます。

  では、なぜそこまで時間とコストを掛けて
  カスタマーサービスに力を入れるのでしょうか。

  その理由は、「カスタマーサービス費用は、マーケティング費用」と
  ザッポスが捉えているからです。

  他の企業が広告宣伝費に予算を掛ける中、
  ザッポスは他社があまり予算を掛けないカスタマーサービス
  予算を掛けることで「顧客感動満足」を実現しています。

  この他社と異なる戦略の結果、ザッポスの「ブランド構築」
  「口コミ発生」「リピート購買」などのメリットに繋がっています。

  実は、小さいけれども地域の顧客から愛される
  住宅会社にも同じような傾向があります。

  契約前はもちろんですが、契約後のフォローや
  アフターサービス等に力を入れることで顧客感動満足を実現し、
  紹介受注やメンテナンスリフォームの受注に繋げています。
  (具体的には、お引き渡しムービーの贈呈、お客様感謝祭の定期開催など)

  では、ザッポスではどのように
  カスタマーサービスに力を入れているのか。

  その具体例を参考にしながら、
  ザッポス流「口コミ・リピート」の起こし方についてお伝え致します。



 ●コストの最小化ではなく、顧客感動満足の最大化

  ザッポスの特異な点として
  コールセンターの取り組みをご紹介します。

  ザッポスは、コールセンターでのカスタマーサービス
  コストをかけています。

  他のオンライン小売り会社が、生産性向上のために
  ホームページ上に電話番号を載せない、
  もしくは発見しづらくすることに対して、
  ザッポスではトップ画面に大きくコールセンターの
  電話番号(フリーダイヤル)を表示させています。

  また、他のコールセンターでは
  オペレータの評価を「平均処理時間」で判断します。
  つまり、1日にどれだけ電話をさばけたか、
  どれだけ短く電話を切れたかがオペレータに求められます。

  一方、ザッポスでは「平均処理時間」を導入せずに
  「顧客の期待以上の対応をすること」に評価軸を
  設定し、その評価軸に沿って自由に考え、行動する裁量権
  オペレータにはあります。
  (過去最長の電話時間は、なんと6時間だったそうです!)

  通常であれば、長時間に亘り電話対応することは大きなコストですし、
  実際にそんな顧客ばかりではオペレータを何人雇っても足りません。

  それでもザッポスがコールセンターにコストを割いている理由は
  問い合わせの電話を、『最高のカスタマーサービスと顧客体験』を
  作る機会として捉えているからです。

  ザッポスの元代表曰く、

  「近年では『ソーシャル・メディア』や『統合マーケティング』が
   とても話題になっています。
   かたや私たちは、魅力的でもなく、ローテクに聞こえるかもしれませんが、
   電話はブランディングに最適なツールの一つだと信じています。
   5分ないし、10分の間、顧客の注意をこちらに向けさせられると同時に、
   ここできちんと対応すれば、顧客はこの体験をいつまでも記憶にとどめ、
   しかも友人たちに話してくれることがわかったのです」(※)


  つまり、コールセンターで重要視されているのは
  「コストの最小化」ではなく、「顧客感動の最大化」という
  ブランディングの視点であり、そのための必要経費、
  マーケティング費用としてコールセンターのコストを捉えているのです。


  また、コールセンター以外にもカスタマーサービスに関する
  様々な取り組みをザッボスでは行っています。

  例えば、注文した靴は「365日間返品無料」であり、
  お届けと返品の配送料は原則無料です。

  倉庫も24時間体制で稼働する仕組みを採用し、
  迅速に商品を届けられる体制をとっています。

  ロイヤリティの高いリピート顧客には、翌日配達にして
  驚かせるなど、様々な工夫がされています。

  それらの一つ一つの取り組みが、顧客感動満足を生み
  口コミやリピートにつながっています。



 ●最も大切なのは「経営者の意思決定」

  具体的な事例を見てきましたが、いかがでしょうか。

  これらの取り組みの根底にあるのは、
  「サービスを通して『ワオ!』という驚きの体験を届ける」
  という顧客感動満足の企業文化・コアバリューがあるからです。

  それが口コミ・リピートに繋がり、
  ザッポスのブランドを構築し
  世界から注目を浴びる企業へさせたのです。


  今回は米国のオンライン小売り会社の事例を取り上げましたが、
  日本の住宅会社でも、彼らの視点は応用することができます。

  初回接客から契約後のフォローや
  お引き渡し後のアフターサービスなどで、
  顧客感動満足の仕組みを整えることで
  紹介受注やメンテナンス・リフォーム受注はもちろん
  会社自体のブランド構築に繋がっていきます。

  ただ最も大切なことは、実は「経営者の意思決定」にあります。

  カスタマーサービス、特に住宅会社でアフターサービスに
  注力する場合、時間や費用などのコストが発生してしまいます。

  そのコストを「非効率な出費と捉え、抑制するのか」
  「顧客満足を実現するマーケティング費用として捉えるか」
  経営者としての『意思決定・意識の切り替え』が必要となります。

  そして、その意思決定ができるかどうかが、
  「顧客感動満足の企業文化・コアバリューを持つ組織」の
  構築を成功させるか否かの分かれ道にもなってきます。



  新設着工数が減少するこれからの時代、
  紹介や口コミ、メンテナンスリフォーム、
  長期的には大型リフォームや売却仲介などまで
  顧客と関わることが求められていきます。

  実際にあるハウスメーカーでは
  住宅購入後のアフターマーケットで330億円の
  総売上を実現している会社もあります。

  御社ではいかがでしょうか?

  ぜひ今後の御社の事業戦略を構築する上で
  カスタマーサービスの考え方・取り組みを
  ベンチマークして頂ければと存じます。

  (※出典:『ザッポス伝説』:ダイヤモンド社 トニー・シェイ著)


   ※どれだけ自社の足下に売上が眠っているかを
    把握するためにも一度、自社のアフターマーケットの
    市場規模を算出することをお勧めします。


   アフターマーケットからの受注への取り組みに、
   ご関心がある方は「住宅不動産フォーラム2011秋」で行った
   『新CRM戦略〜アフターの紹介発掘、リフォーム受注の実現』で
   ご紹介させていただいた事例が参考になると思います。

   ご関心がある方は是非、お気軽にお問い合わせ下さい。
   フォーラムのレジュメをお送りさせていただきます。



 ●今回のベンチマーク実践(実践期限:1日間)

  ・自社のカスタマーサービス(接客や契約後のアフターサービス)に
   社員共通の指針が設定されているか確認する。
   設定されているとしたら、どのようなものかを書き出す。

  ・カスタマーサービスの注力による紹介発掘、リフォーム受注の強化、
   自社のブランド構築にどのように取り組むべきか
   経営幹部で話し合う日時をスケジューリングする。

任天堂から学ぶ『成熟市場で顧客の心を掴む秘訣』

  ※ベンチマーキングとは、
   「他社の優れている点を学び、自社に活用する」
   という経営手法です。

   本コラムでは、高い業績をあげている企業の「ベストプラクティス」を探り、
   御社の企業経営・マネジメントに活用できる内容をお届けします。


 ●任天堂から学ぶ「成熟市場で顧客の心を掴む秘訣」

  今回は、「Wii」や「ニンテンドーDS」などの大ヒット商品で有名な
  任天堂の事例をご紹介し、「成熟市場で顧客の心を掴む秘訣」に
  ついてお伝えしていきます。

  年々ゲーム離れが進む成熟市場において、
  任天堂が開発した「Wii」「ニンテンドーDS」は
  ゲーム機史上、最速の販売記録を樹立しました。

  ※「Wii」が販売台数5000万台、「ニンテンドーDS」が販売台数1億台を
    最速で突破しました(2009年3月ニュース)

  その結果、リーマン・ショック後の世界不況にもかかわらず
  2009年3月期の決算では任天堂の過去最高となる売上1兆8386億円、
  純利益2790億円を記録しました。

  任天堂がどのようにして、縮小する市場の中で
  かつ世界不況の最中において過去最高売上・純利益を
  達成するほどの新商品を生み出すことができたのか。
  その秘密を本コラムでご紹介致します。

  また、住宅・不動産業界も同じく成熟期に突入しています。
  ぜひ自社の事業展開の参考材料として
  お読み頂ければ幸いです。


 ●任天堂の目的はお客様に喜んで頂くこと

  任天堂の岩田社長は、自らの事業を「娯楽産業」と捉えています。

  ※岩田社長は2002年に取締役社長に就任され
   「Wii」「ニンテンドーDS」の開発に一貫して関わられました。

  「ゲーム産業」でなく「娯楽産業」と事業を捉えたからこそ、
  “新たな技術”による最新ゲームをお客様に届けるのではなく、
  新たなゲーム体験により“お客様に喜んで頂くこと”を
  企業の目的と据えることが出来たのです。

  そして、お客様の喜びにフォーカスすることで、
  ゲーム離れしていた層(主婦やお年寄りなど)に受け入れられ、
  結果的にゲーム機やゲーム産業の
  イノベーションを起こすことにつながりました。

  では、どのように「お客様」にフォーカスしていったのか。
  その事例を2つご紹介します。


  事例の1つ目が、「ゲーム離れするお客様」へのフォーカスです。

  「マリオ」や「ゼルダ」などの人気シリーズの生みの親である宮本専務と
  岩田社長が、新しいゲーム機のコンセプト作りについて議論を交わしていた
  2002年当時、議論の入り口はこのように始まっていました。

  「何で人はゲーム機に触らないのか、何で人は逃げちゃうのかな」(※)

  ゲーム離れする「お客様の不満」や「ハードル」に焦点を当てて、
  新商品開発の議論を交わしていました。



  当時のゲーム機は、ボタンが何個も付いていて複雑であったり、
  ソフトにしても高度な技術を要するものが増えてきており、
  初心者とゲーム愛好者のギャップが広がっていたのです。

  そこでゲーム愛好者だけでなく、ゲーム離れしている人にも
  関係のあるテーマを選べば、ゲームの時間を無駄と考えてしまう人も
  興味を抱いてくれるのではないか…
  そのような方向で岩田社長と宮田専務の議論が収斂していきました。

  そこで生まれたのが、携帯型ゲーム機にタッチペンを使うという
  アイデアでした。

  1つの画面は直感的なインターフェースとして利用、
  もう1つの画面はメイン画面として使う。
  これであれば誰でも簡単に触れることができるし、
  ソフトの表現の幅も広がる。
  そうして生まれたのが、現在の「ニンテンドーDS」です。

  その後の「ニンテンドーDS」のヒットは、皆様のご周知の通りです。



  事例の2つ目は、「家庭の財布の紐を握るお母さん」へのフォーカスです。

  岩田社長は、携帯型ゲーム機ニンテンドーDS」の開発と平行して
  据え置き型ゲーム機の開発にも着手していました。

  据え置き型ゲーム機の開発においても
  「技術の進化をベースとする開発はもうやめよう」
  と幹部陣に伝えます。

  その代わりに示したのが、誰も経験したことのない
  まったく新たなアプローチでした。

  ゲーム機としての基本性能を向上させる技術は捨て、
  家族の機嫌をとるための技術は積極的に採用する、
  言わば「お母さん至上主義」の開発をやろうと言ったのです。

  子供がテレビゲームで遊んだ後、コントローラーが
  片付けられていないのを見て、お母さんが「きーっ」となっているとか
  家には既に複数のゲーム機があって、お母さんはもう1台もいらないとか、
  とにかくゲーム機は邪魔なものと思われていたのです。

  だから、家族の誰からも嫌われないようにしないと、
  ゲーム人口の拡大なんか不可能であるという想いが岩田社長にありました。

  お母さんは高性能なゲーム機に喜ばない。
  では、何を嫌い、何に喜ぶのか。

  「お母さんのご機嫌を起点とする発想」が、邪魔な線のないリモコン、
  省スペース・省電力・静音の機器本体を実現し、
  結果的に現在の「Wii」が出来上がりました。

  ハード機器はもちろんソフト面でも家族のご機嫌とりの発想が受け継がれ
  「健康・ダイエット」「スポーツ」などのコンテンツが生まれ、
  結果的に家族の団らんの場に受けいられていきました。


  この2つの事例から分かる通り、今までにない斬新な発想で
  顧客の心を掴むゲーム機を生み出せたのは、
  技術や商品にフォーカスしたからではなく、
  「お客様」の視点にフォーカスしたから可能となったのです。


 ●正しいと思うことを積み重ねること

  任天堂の「Wii」や「ニンテンドーDS」のヒットを
  ブルーオーシャン(競合のいない市場)に打って出たからだ、
  と評する声も多いですが、それはあくまで結果論に過ぎません。

  任天堂の経営陣やメンバーが、「今までにない斬新な商品」を
  作ろうと思っていたのではなく、プロセスとしては
  徹底的に「お客様」の視点にこだわったことが成功の鍵でした。

  実際に当時の岩田社長も、
  「今の成功を確信しているわけではなかった」(※)
  と語っていますし、
  むしろ、正しいことをしたら結果がついてきたと述べています。

  そして、その背景にあったのは自らの事業を「娯楽産業」と捉え、
  「お客様」に喜んで頂くことを企業の目的としていたことにあります。

  ゲーム離れしている「お客様」の不満や不安などの
  ハードルをどのように解除できるか。
  ゲームが嫌いなお母さんにもどうしたらゲームを楽しんでもらえるか。
  「お客様」の喜びを徹底的に追求していったのです。

  改めてお伝えすると当然のことのように聞こえますが、
  油断すると本来あるべき「お客様」の視点が抜けてしまうことも
  実際に多くの会社様で起こっている事実だと思います。

  新商品の開発や今までにない新しい取り組みに挑戦する際に、
  「お客様」の視点にフォーカスするという点を
  ぜひベンチマークしていただければ幸いです。

  (※出典:『任天堂“驚き”を生む方程式』
       日本経済新聞出版社 著者 井上理 )