スターバックスに学ぶ「ブランド構築」

  ※ベンチマーキングとは、
   「他社の優れている点を学び、自社に活用する」という経営手法です。

   本コラムでは、高い業績をあげている企業の「ベストプラクティス」を探り、
   御社の企業経営・マネジメントに活用できる内容をお届けします。


 ●スターバックスに学ぶ「ブランド構築」

  今回はスターバックスの事例を取り上げ、
  ブランド構築についてお伝えしていきます。

  住宅業界において「ブランド」への関心・ニーズは
  年々高まってきております。

  「大手に負けるのはブランドがないからだ」

  「お客様に選ばれる、口コミされるようなブランドになりたい」

  「価格競争に陥らないためにもブランドを確立したい」

  など、「ブランドがあれば、全ての悩みが解決する・・・」
  という魔法の杖としてのブランドへの期待を感じます。


  今回は“スターバックス”の事例を基に、
  ブランド構築の出発点となる
  「ブランド・コンセプトの作り方」についてお伝え致します。


●ブランド構築の出発点

  ブランドを考える際の構成要素として、

   「商品」 …スターバックスでは「コーヒー」
   「顧客との接点」…「CM、ウェブ、イベント」
   「社員・スタッフ」…「店員・スタッフ」

  の3つの構成要素があります。


  住宅業界に置き換えると、以下のように表現できます。

  「商品」・・・住宅そのもの、ローン商品、エクステリア、
        インテリア、アフターサービスなど

  「顧客との接点」・・・モデル、ショールーム、営業ツール、
            チラシ、WEB、イベントなど

  「社員・スタッフ」・・・営業、設計、工事、管理部門スタッフ、
             営業アシスタントなど


  そして、ブランドの構築において重要なポイントは、
  これらブランドの構成要素に「自社のコンセプト」や
  「コアバリュー(核となる価値)」を反映させ、
  一貫させていくことになります。


  では、そもそも自社のブランドの核となるコンセプトや
  コアバリューをどのように決めれば良いのでしょうか。

  ブランドのコンセプトを決める上で必要な
  検討項目は以下の3つになります。

  1)競争優位性

  競争優位性とは、他社との違いを明確に示すものであり
  自社に「富をもたらす源泉」となるものです。

  スターバックスで言えば、
  創業当初は「エスプレッソ主体のテイクアウトメニュー」による

  「他にない美味しいコーヒー」
  「それを持ち歩くお洒落さ」
  「心地よい空間でのひととき」

  といった、「新しいライフスタイルの創出」が
  競争優位性となり、“シアトルスタイル”という
  コーヒーの楽しみ方の火付け役となりました。

  また、スターバックスは、業績がひどく落ち込んだ時にも
  自社の競争優位性であるコーヒーの品質や社員教育のコストを
  カットすることなく、逆に投資することで業績を回復させています。

  つまり、「過去の自社の競争優位性とは何だったのか」を
  徹底的に追求した上で過去に過度に縛られることなく、
  「何を守り、何を捨てるべきか」を精査することが、
  ブランドのコンセプトを決める上で重要となります。


  2)価値観

  「価値観」というと不思議に感じるかもしれませんが
  スモールブランドを築こうとする会社にとって
  必要不可欠なものとなります。

  これは、創業者や経営に携わっている方の
  「価値観(事業への想い)」とほぼ同義だと捉えてください。

  競争優位性をブランドのコンセプトに昇華する際には、
  経営者の価値観(事業への想い)を深掘りし、
  それをコンセプトに反映する必要があります。

  「価値観」がコンセプトに反映されていないと、
  経営者自身の「ブランドに掛ける想い」が弱くなり、
  結果として、組織に浸透させることが出来ずに
  ブランドが「ただの看板」として終わってしまうからです。

  スターバックスの場合、
  「素晴らしいコーヒーと空間・場を提供すること(競争優位性)」で
  「人生の幸せなひとときを提供したい(価値観)」という
  想いが、出店計画から店舗設計等、全ての判断基準になっています。

  その姿勢が端的に表れているのが、フランチャイズ展開をせずに
  直営店のみで経営を行うという事業展開のやり方です。



  3)共感性

  最後は、周りの人(お客様や社員)から「いいね!」と
  思ってもらうための「共感性」です。

  全てのブランドには、「共感性」があります。

  スターバックスの場合は、他社と比較してコーヒーの価格が
  高いにも関わらず、多くのお客様や社員をファンに育てています。

  それはお客様や社員が、スターバックスが提供する
  「スターバックスのあるライフスタイル(空間・時間)」に
  “共感”しているからこそであり、スターバックス
  この“共感”を生むために徹底的に考え抜いた
  サービスの設計を行い、現場で実行しているのです。

  この“共感性”を検討する上で必要なのは、
  実は「対人感受性」や「人との関わり方」などの
  属人的・直感的な要素になります。

  昔から「経営は人なり」と言われ続けており、
  松下幸之助も「事業は人なり」と言い続けていましたが、
  このお客様や社員から「共感性」を得られるかどうかが
  お客様に支持されるブランドになるかどうかの別れ道になります。



●ブランドコンセプトを特定せよ

  ブランド構築と言うと
  効果的な広告宣伝を思い浮かべる方も多いと思います。
  もちろん、それも必要です。

  ただし、ブランドコンセプトが特定できていない状態で
  広告宣伝費を投下し、一時的に良いイメージを
  消費者に与えたとしても中長期的な視点で見ると、

  「儲からない」
  「長続きしない」
  「社員がついてこない、共感しない」

  という事態に陥り、結局は事業が安定しないという
  状況に陥ってしまいます。

  しっかりとしたブランドを構築し、
  エリアで愛され続ける会社に育てたいという経営者様は、
  まずはブランドコンセプトの特定から始めてみてください。

  とは言え、ブランドコンセプトの特定は、
  1人で実施するには非常に難しい課題でもありますので
  信頼できる相手に、ご相談していただくことをお勧めします。


●今回のベンチマーク実践(実践期限:1日間)

  ・自社のブランド・コンセプトを
   「競争優位性」「価値観」「共感性」の3つから検討する、
    もしくは相談する時間をスケジューリングする。

  ・また、その3つについて相談できる相手を
   それぞれ書き出してみる。